伝統宗教と共にある生活

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ベナン南西、トーゴ国境沿いに位置するアプラフエ市で生活を始めて1年以上が経ちました。小学校での衛生啓発が中心の活動ですが、この1年は任地に溶け込むことを第一の目標とし、村の行事に積極的に参加するなど、村での日常生活も大切にしてきました。


現地の人々にならい、朝は早くから活動を開始し、日中の暑い時間は日陰で昼寝。もちろん仕事もするけれど、やりすぎは禁物。「Tu as fait un peu?」(フランス語で「ちょっと仕事した?」という意味)―。「がんばりすぎると疲れて病気になるから、ちょっとずつ進めればいいんだ」という現地語の決まり文句のあいさつが、このように公用語のフランス語に訳されて使われているのも、ベナンならではのおもしろいところです。これはベナンの生活スタイルそのものを表したあいさつだと思います。そんなのんびりした生活の反面、伝統宗教を代表とするベナンの文化は刺激的なものばかりです。


ベナン南部に多い伝統宗教のブードゥー教。宗教というよりもアニミズム的な要素が強く、生活に欠かせない、伝統化した信仰といえます。私が住む村の周辺は、ブードゥー色の濃い黒魔術や伝統医療も盛んで、小さいころに魔よけとして体中に無数の傷を付ける習慣も残っています。村のあちこちで頻繁に行われるブードゥーの伝統儀式では、肩をパタパタと動かすアジャ族の複雑なダンスが欠かせません。精霊を呼ぶという楽器の奏でる独特なリズム、いけにえの羊の血と踊り手の汗がまとわりつく生臭い空気、地酒の甘辛いにおい、地面にこもった熱。これらが混じり合うと、村全体が神秘的な空気に包まれます。


こうした少し血生臭い伝統は、第三者から見れば理解し難いかもしれません。しかし、彼らは儀式や伝統的習慣を通じて、民族の絆を確かめ合っているような、毎日を力強く生きるために自然からエネルギーをもらっているような、そんな気がします。彼らはブードゥーから学び、また、彼らの生活はブードゥーの上に成り立っている、間近で見ていて、そう思わずにはいられません。


ある時、「あれがない、これがない」と騒ぐ私に、近所のおばさんは「今あるもので十分。これ以上何が必要なの?」と言いました。お金がないというレベルの問題ではなく、一人ひとりに最低限与えられるべきモノの量を彼らは知り、補い合って生きているのだと思います。ないものを嘆くのではなく、あるものに感謝し、自然と一緒に生きる彼らからは、教えることよりも教わることの方が多いような気がします。

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女性の呪術師のダンスから始まる儀式

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いけにえの羊を奪い合う村人たち。羊は生命力を表す

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参加者にふるまわれる地酒と豆を準備する女性


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上半身裸で祈りを捧げる女性たち

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ブードゥーの神聖な祭壇

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この先の村のどこかで、ブードゥーの伝統が引き継がれている

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