サボテンの花
スエズ運河に繋がる紅海の入り口、「アフリカの角」に張り付いて、サヘルの国エリトリアがあります。首都のアスマラは空気の澄んだ高原にあり、もうすぐ雨季を迎えます。
古くはトルコに、続いてエジプト、イタリア、英国、そして隣のエチオピアに占領され、ついにはこのエチオピアと30年間戦い続け、1993年にやっと独立を果たした、アフリカで一番若い国です。独立後15年経っても、臨時政府のまま国民皆兵で臨戦態勢をとっています。そのせいか、アフリカで一番といえるほど犯罪や汚職が少なく、夜中に女性が一人歩きできる珍しい国です。
しかし燻り続ける周辺国との国境問題や世界的なオイルの高騰など、経済再建への障害は大きく、政府がいくら挙国一致を叫んでも景気は落ち込むばかりです。昨年末から、こぶし大のパンの配給が、1人一日一個だけになりました。日本は小麦の食糧援助などをしていますが、人々の生活はなかなか楽になりません。こんな様子を、季節の挨拶状に添えて日本の数名の方に送っていたら、めったに返事の来ない人から厚めの封書が届きました。
「戦後の食糧難の時、町で一粒のカボチャの種を拾った人がいて、育てる土も無いので新聞紙をちぎって水に浸し、それへ蒔いて毎日祈っていたら、芽が出て、葉が出て、花が咲き、いくつも生って、近所中で分けて食べ、最後に残った葉と茎は、刻んで汁の実にして拝んで食べた・・・というのを読みましたが、水さえあればなんとかなりませんか」 封筒には、荒地に強いソバやダイコンなどの種が。
今年は雨季が早いようです。アフリカ大地溝帯の北端に吹く紅海の湿った風が、標高2,300mのアスマラを越えるようになりました。灰色の空に映えて、鮮やかな黄色のウチワ・サボテンの花が咲いています。これが実を結び始める5月下旬には、エリトリア最大の祝日、独立記念日があり、続いて戦争犠牲者の日が祈念されます。この時期は、戦争で飛散したエリトリア人が祖国に戻るときであり、家族や友人がお互いの消息を確かめ合うときです。大通りを埋め尽くすキャンドルの灯りのなかに、長かった闘争への想いと、未来への希望が揺れます。