海を渡るクリスマスプレゼント
ソープストーン。せっけんのような光沢を有し、加工しやすいという特徴を持つ石。その石が、ナイロビから400キロメートル離れたのどかな田畑が広がる町、タバカと日本をつなぐ。2011年、スモールアートという地元グループがそのソープストーンを加工して作った商品が、株式会社良品計画(MUJI)の商品として日本に輸出されることが決まったからだ。
「ソープストーンが良品計画の商品に決まったという話を聞いたときは、正直言って不安でした」。そう話すのは、スモールアートで商品の品質管理、納期管理の補助を行っている青年海外協力隊の中野恵里隊員。
タバカでは町全体がソープストーン加工業にかかわっており、石の切り出しから加工まで、すべてが地域住民の手で行われている。一つひとつが手作りのため、ポーズが全く違う商品もしばしば。しかし、良品計画の商品となった以上、均一な品質が求められる。地元の人にとっては細かい違いであっても、商品としては認められない。
そこで、中野隊員は見本の商品を一つ置き、それと同じ形を作ってもらうようにした。また、形が違うと判断されたものについては、どの部分が違うのか、一つひとつ職人に説明した。スモールアートの工場があるタバカは、乗り合いバスも通らないでこぼこの道を20分以上歩かなければならないが、中野隊員はその道を何度も通い、品質を細かく確認していった。最初はバラバラな大きさ・形だった商品が、だんだんと同じ形になっていった。
ソープストーンは、住民の雇用創出・所得向上に重要な役割を果たしている。自分たちの商品が日本に向けて輸出されるということは、地元住民にとっても大きな刺激となっている。スモールアートのスタッフは「日本というマーケットに進出できることは、私たちにとって画期的なこと。日本製品は品質が良いというイメージを世界中の人が持っている。日本の規格に合った商品を作り上げることによって、スモールアートのブランドをアジアにも広めたい」と話す。
JICAは、一村一品プログラム(注)を通じ、基礎ビジネス研修や展示会の機会を設けている。今回のスモールアートと良品計画の共同企画も、一村一品プロジェクトの一環として、実現した。
予定していた納期からは少し遅れたが、10月に入り、出荷が終わった。「タバカの人々の気持ちが日本の人に届けばうれしい」と中野さん。石を切り出し、加工する地元の職人、それをサポートする協力隊員、ケニアの産業の未来を思うJICA関係者、さまざまな人の思いが詰まったスモールアートの商品は、1万キロメートルを越えて11月中旬以降、日本とヨーロッパ、中国、台湾の良品計画の各店舗で販売される。
(注)地域の特産品を育てることでマーケットを形成し、地域経済の活性化につなげようという、大分県発祥の試み。同県大山町が、県や国が奨励するコメ栽培や畜産業ではなく、地元で収穫を上げていた梅、栗の栽培を町の産業振興策とし、地域活性化を成功させたという経験がモデルになっている。

ソープストーンで作られた動物の置物。一つひとつが違う表情を持っている

採石場を視察する中野隊員(中央)

ソープストーンを成形する職人。1日に20~30個を完成させる

ソープストーンを磨く女性