I can touch the FIRE!
ザンビアの生活を知るための農村ホームステイの最中、私は毎晩、一家の主であるブリジットさんや娘さんたちと、たき火を囲んで語り合った。ブリジットさんは中学校を中退しており、村の中でも学歴は決して高くない方だが、一番流ちょうに英語が話せる。人望も厚く、JICAがこの地域で行っている農村開発プロジェクトの村の取りまとめ役を務めている女性だ。
ザンビアでは首都ルサカの高学歴な男性でも「ザンビアがよくなるには、どうしたらいいと思う?」と聞くと答えが返ってこなかったり、「君たちがもっとお金をくれたらよくなるよ」ということを言ったりする人が多い。
しかし、ブリジットさんは自分なりの、そして現実的な答えを持っている。「ザンビア人は環境に恵まれていないのではなく、今までLazy(怠惰)だった。できることはたくさんあるのだから、皆が一生懸命働くことが国をよくする一番の方法よ。だから、私はこの村の人たちと一緒に一生懸命働くの」。そして、「日本の人たちは頑張って働いたから、とっても発展したのでしょう? だから私に日本人の働き方を教えてね」と付け加える。そんなブリジットさんのチコカ村は、ザンビアの農村開発プロジェクトの中でも最も成功している村の一つだ。
ブリジットさん宅でのホームステイは小さな驚きの連続だった。女性が3人集まれば、自然と、手編み物の販売や農業ローンの借り入れなど、新たなビジネスについての話になる。昼間の畑作業はくらくらするぐらい強い太陽の下、私の何十倍ものパワーで働く。せめて夕飯のお手伝いでもと思って買って出るのだが、ここでも私は全く使い物にならない。火が鍋の周りを轟々(ごうごう)と囲んでいて手が出せないからだ。
そんな炎をもろともせず中身をかき回す可憐(かれん)な次女、16歳のブランディーナ。「I can touch the FIRE!(私は火が触れるの)」と言って、鍋のまきの炎が燃えている方を持って移動させ、火を弱めてくれた。「きっとあなたたちは炎の神様に愛されているのね」と伝えると、ブランディーナは「太陽の神様にもね。ちょっと暑すぎる時もあるけど」と言って笑った。太陽に愛された国の人たちが、世界を明るく照らす日がいつの日かきっと来るよという話を二人でした。
この村の人たちは確かに、私にはできないことができて、私の持っていないものを持っている。そして、きっと私もこの村の人たちの持っていないものを持ち、できないことができる。お互いのできないところを違う価値観を押し付けて責めるのではなく、お互いのできることを持ち寄ることこそ国際協力の本当の姿なのではないかと、たき火をつかむブリジットさんの手を見ながら思った。

ブリジットさんのいつもの夕食準備

ブランディーナの夕食準備

火に手を突っ込んで調理中

夕食後はいつもゆっくりたき火を囲む

家から500メートルの所にある井戸で水くみ

近所の子どもたちにお話をするブリジットさん