ブエノスアイレスに響く太鼓の音
日本で出土した古代のある土器に、上部を一周するように小さな穴が多数あるのが発見されたことがあります。これは皮を張った跡ではないか、つまり1万年以上前から太鼓のようなものが存在していたのかもしれない、ということです。縄文時代から太鼓はコミュニケーションの手段として使用されていた、という説もあります。もしこれが本当だとしたら、太鼓は今も変わらず、その役割を果たしていることになります。太鼓には人と人を結びつける力があります。アルゼンチン、ブエノスアイレスでそれを知りました。
今年から配属先である日本語学校の太鼓チームに入りました。小さなチームですが、みんな太鼓が好きで、いつも元気に声を出して練習しています。私は生徒に教わりながらなんとか練習についていき、発表の場にも参加しています。先日はブエノスアイレス市の日本庭園で他の太鼓チームとともに演奏しました。
ブエノスアイレスの日本庭園は市の中心部にあります。週末は家族連れやカップルの姿が多く見られ、年間40万人もの人が訪れる、アルゼンチン人の憩いの場です。1967年、現在の天皇陛下が皇太子時代にアルゼンチンを訪問された記念として造られ、開園しました。この庭園の開園、そして現在までの管理には多くの日本人移民、日系人の方々が協力しています。園内には「日本移民汗の碑」と書かれた大きな石碑もあります。その他に日本食レストラン、売店、図書館などもあり、日本文化テーマパークのようです。海外でこんなにも日本文化が受け入れられていることを知ると、日本人はみんな嬉しく思うでしょう。
日本庭園では週末になると日本文化関連のイベントも行われており、生け花、お茶などの伝統文化からアニメのコスプレ大会まで、その内容はさまざまです。先日参加した太鼓のショーもその一つです。大勢の観客に囲まれ、覚えたての太鼓を披露しました。披露と言ったら大げさですね。太鼓を楽しむ姿を見てもらった、と言ったほうが正しいでしょう。参加者全員での演奏もあり、力強い太鼓の音と「アイーヤ、イーヤサッサ」という掛け声が日本庭園に響き渡っていました。この時、何ともいえない一体感を感じました。演奏者だけでなく観客も皆一つになったような初めての感覚でした。
「日本の雰囲気を味わいながら、仲間と、力、呼吸を合わせ一つになる」
皆が太鼓に夢中になる秘密はこれでしょう。一度知ったら止められなくなるのかもしれません。
時を越え、海を渡った日本文化がアルゼンチンで伝えられています。太鼓がその一つです。民族の壁、言葉の壁もない、太鼓による真の異文化コミュニケーションがここで実現されています。

アルゼンチン人の太鼓の先生(中央)と

公園入口に並ぶ人々

演奏前にちょっと緊張

たくさんの人が見ています

最後には、演奏者と観客の境がなくなりました

日本移民汗の碑と筆者