アルゼンチン・サンファン州の畑地かんがい事情
アルゼンチンのサンファンは、首都ブエノスアイレスから北西に向かって1,200キロメートルの位置にあります。標高約700メートルで、アンデス山脈を挟んで隣は、チリになります。州の人口は、72万人で、そのうち、約50万人近くが州都とその近郊に集中しています。
サンファンは、高温乾燥地帯で、年間の降水量は100ミリ以下です。気温は、大雑把にいうと最高気温50度、最低気温マイナス10度と温度差が大きく厳しい気象条件下にあります。
農業は、ブドウとオリーブの栽培が盛んです。面積でいうと、ブドウとオリーブで全体の4分の3を占めています。降水量が少ないので、農業用水は、アンデスの雪解け水に頼っています。サンファン市を流れるサンファン川の上流にウジュンダムが設けられていて、これがサンファンの州都及び近郊のすべての水を賄っています。
しかし、近年はサンファン州の人口増加に加えて、アンデスの降雪量が減少傾向にあることから、水資源の有効利用に大きな関心が寄せられています。特に、農業用水のかんがいは、従来から水の利用効率の悪い畝間かんがいが主流であることから、節水かんがいへの移行が大きな課題になっています。
このため、私が配属されている国立農業試験場では、早くから節水効果の高い点滴かんがいシステムの研究が進められており、いまでは実用化の段階から普及の段階へと移行している状況です。
現在の普及率は約30パーセントで、まだまだ今後の努力が必要とされていますが、それにはいくつかの問題もあると考えています。畝間かんがいから点滴かんがいへ移行するためには、農家の負担による多額の投資が必要であること、水の有効利用は、直接的には州が解決すべき問題であり、農家は点滴かんがいに移行しなくても、すぐには困らないこと、次に、今、開発されている点滴かんがいは、ブドウやオリーブなどの固定作物には適していますが、露地栽培の野菜等には労働面での負担が大きいことから適さないこと―などです。
このような点を踏まえると、今後、州政府の関与の在り方(普及は国立農業試験場が担っている)や節水かんがいの新たなシステム研究など、今後とも行政によるさらなる検討が必要ですが、最近は、こうした状況を受けて、水の管理組織の強化等に対し、農民サイドからも関心が向けられはじめています。特に、先進的な日本の農家による水管理組織等にも興味を示しており、今後のこうした動きは、日本とアルゼンチンの新たな交流と相互理解の幅をさらに広げる機会にもなるものと思われます。

サンファンの水がめ、ウジュンダム

ウジュンダムの湖水全景

畝間かんがいは土壌浸透による損失が大きく、水の利用効率が悪い

オリーブ畑に設置された点滴かんがい