先進国への足跡
神が自然界の最も美しい処を選り抜き、一つにした国が「チリ」だそうだ。住んで納得。様々な自然や文明の変化、豊かな天地の動物達など自然界の冴えわたる技を目にする事ができる。北端は長大なる砂の絨毯(じゅうたん)。シュールな奇岩、宝石箱を翻した超過の輝きを持つ星。塩湖に群れなすフラミンゴと雄大な砂漠の玄関から始まり、南端は幻想的な景観を持つパタゴニアで終わる。
西に浮かぶ孤島――900体の石の守り神、モアイが屹立する「イースター島」。雨の日も風の日もきりっと口を結び、島を守る。魂が揺さぶられる。神秘と謎に満ちた空間だ。
そして任地「チロエ島」――私は歯科衛生士として、学校で歯科予防処置や保健衛生の授業をしている。年中雨だが、夏は一変、島は黄色のお花畑。吸い込まれそうな色の海や山に心を奪われ、パステルカラーの街並みがおとぎの国へと連れて行ってくれる。此処は本土と異なる文化を持つ、家を家具ごと雄牛で操り移住する「ミンガ」。又、貝や肉を大量に土の中で蒸す郷土料理もある。昔の知恵と伝統と共に、皆誇り高く生きている。
一方、中央に位置する首都、サンチアゴ。高層ビルが立ち並び、水質汚濁、大気汚染、ごみ問題等、多くの自然、環境問題を抱えている。
苦杯を持つ私達は過ちを繰り返さぬよう尽力するが、ポイ捨てされたゴミを拾う私に 子供達は不思議そうに聞く。
「なぜ拾うの? 掃除の人が拾うからいいよ」
ポイ捨てに悪の意識は全くない。大量の廃油も気にせず流す。ビニールはよく燃え便利だから、と暖炉で火種。瓶も生ごみも医療廃棄物も一緒くたにされたゴミを野良犬が道に散乱する。後は誰かが処理するし。
「今が大事」。先のことは・・・?、が此処流。歯磨きしない理由も同様。味噌っ歯を出し、無邪気に笑う愛しい子供達。教育や躾(しつけ)が一切を左右する事を改めて学んだ
人間次第で変化する自然界。麗しいチリの自然や将来の為にも誰の物でもない地球に、共存する責任を持ち、「先」も考えて生きることを誨諭(かいゆ)したかった。
そして、青年海外協力隊としての任期満了まであと少し。先日、子供達が恥ずかしそうに膨らんだスーパーの袋を持ってきた。
「Tia(お姉さん)のこと好きだから、これから一緒にする」
そう、中身は「ゴミ」。
残された課題へのリレーがやっと始まった。喜悦で目頭が熱くなるのを覚えた。

連なる山肌から太陽がのぞく北部アタカマ砂漠

イースター島、巨大モアイ像

予防処置後のご褒美を手に持つ南部チロエ島の子供達

チロエ島の木造教会(12の教会が文化遺産に登録されている)

チロエ島伝統、土を鍋代わりに使って作る、貝や肉の蒸しもの「クラント」

パタゴニア「パイネ公園」のペオエ湖