チャンスのタイミング
私の配属先は視覚障がい者のための職業訓練校です。自立を目的とし、歩き方や白杖(はくじょう)の使い方などを教える生活クラスのほか、パソコンや陶芸、木工など、技術を学ぶクラスがあります。
私の活動するマッサージ師養成クラスでは3年前に前任の隊員があん摩を教え、今回はリフレクソロジーと指圧を取り入れたいという要望でした。しかし私が来るまでに空いた2年間、あん摩の授業は一度も行われず配属先の教員もうろ覚えでした。
「私が帰った後も教えたことや残したものは使われなくなるのだろうか」という不安の中、教材作りに取り掛かりました。まずは前任者が残したあん摩の教科書を何冊か点字に起こし、配属先の教員と復習。大きな文字と点字の2種類のリフレクソロジーの教科書作りも始め、使えそうな資料を片端から点字に起こしました。解剖学の授業に不足している内容も加えました。
周りの反応が変わりだしたのは1年が過ぎたころ、触覚で足裏の反射区の位置を感じ取れる手作りの立体地図を披露した時でした。配属先の教員にはカラフルな立体地図を作り教材として利用する発想がなかったのだと思います。その時から私が作っている物ややりたい事に対して、徐々に理解を示してくれるようになりました。
大きな変化が訪れたのは活動開始から1年半後、私が指圧と視覚障がい者への指導のための研修を終え、ニカラグアから帰ってきた時でした。スペイン政府からの援助金に加え、昨年から私が提案し続け、配属先が進めていた付属治療院設置プロジェクトに対しホンジュラス政府から認可が下り、さらにホンジュラス職業訓練省が配属先の卒業生に連名で修了証書を出すことになりました。これに伴いカリキュラムの大幅な見直しが行われ、この1年半作り続けてきた教材が今後利用されていく希望が生まれ、一気に物事が動き始めました。
ちょうど同じ時期から毎週日曜日に「15分無料マッサージ」の実習を学校の前で始めました。この実習は生徒の技術とコミュニケーション力の向上、および社会還元・地域還元を目的としています。約3時間で終わる実習ですが、初回から毎回30人を超える人たちがマッサージを受けに来てくれています。「これで何か飲んでね」とチップを渡された時の生徒の笑顔はいつ思い出しても胸がいっぱいになります。以前から予定していたリフレクソロジーの授業も始まり、実習との相乗効果で生徒のやる気も高まり、予想以上に授業が早く進んでいます。
生まれた国が違い発想も物事を進めるスピードも違いますが「視覚障がい者に自立の道を」という目的のために活動しているのは同じだということを改めて実感しました。この大きな変化の時期にここで活動できることに感謝しています。

解剖学の授業風景、体を動かしながら学んでいく

新しく追加した点字のあん摩の教材

日曜日の無料マッサージの実習風景

教室をクリニック仕様にリフォーム中

立体的に作成した足裏の図

生徒にリフレクソロジーを直接指導(右が筆者)