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「中米広域防災能力強化プロジェクト"BOSAI"」の活動報告より(2)-技術協力のポイント(トレス・ヘルマナス村の防災活動から)-

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(1)からの続き

専門家(教える側)とコミュニティーの人たち(教えられる側)の関係以前に、防災に対峙(たいじ)する人間同士の連帯感の醸成が、技術協力の成果にとって極めて重要であり、技術的な方法論のみに偏りがちな傾向を反省する必要があると思われた。これを気づかせてくれたエピソードを紹介する。
◇   ◇
2009年10月6日にトレス・ヘルマナス村において、専門家(筆者)は雨量の観測に関するワークショップを開催した。その村はパナマ市から西へ国道を1時間走り、田舎道に入ってからさらに1時間30分ほどで到着する。雨季には車が入れず、馬による交通となる。ワークショップの対象コミュニティーはその村のみであったが、近隣の3つのコミュニティーからもリーダー格の人が出席していた。終了後、開催した村のリーダーより、サンタロサ村のリーダーを紹介されたので、彼にも雨量計をプレゼントした。それはワークショップの内容を理解し、雨量観測の重要性を認識して観測を実施するコミュニティーが一つでも増えてほしいと言う淡い希望からであった。彼はとてもうれしそうに雨量計を受け取ったことを覚えている。後から、このワークショップに出席するため、彼はなんと道なき山道を片道2時間もかけて歩いて来たことを聞き、真剣な態度に心を動かされた。


その4ヵ月後の2010年2月3日に、彼の村を訪問する機会を得た。この訪問は、パナマ国家防災機関(防災プロジェクトの相手先機関)のプロジェクトマネージャーや関係者の強い要望があったためである。サンタロサ村には保健所や学校どころか、電気すらなく、行政から見放された村であり、そのリーダーの家も極めて貧しいことが一見して分かった。また、自然環境が厳しく、至る所に洪水や地滑りの爪痕があり、生活環境が劣悪であることがうかがえた。10月にプレゼントした雨量計が家の周囲に見当たらないのでそのリーダーに聞くと、今は乾季であり、盗難や損傷を受けないように家の中に保管してあるとのこと、大事そうに家の中から持ってきて見せてくれた。そこで専門家が、雨量計の設置個所を確認し、設置方法について指導した後、昨年の雨季期間中に測定し記録しているかと質問したところ、粗末なペーパーであるが、しっかりと3ヵ月間の雨量が記録されていることが判明した。経済的に厳しい生活の中で鉛筆や記録用紙を準備する苦労を察するに、専門家は、村の防災を思う彼の心に真の人間性を感じ、深い感動を覚えた。特に専門家に雨量記録を説明した際の、彼の真剣な眼差しがいまだ忘れられない。このような「一人の真剣な思い」が、専門家に感動を与え、専門家をして全力で自然災害防止技術を移転しなければならないという「大いなる責任」を抱かせる結果となったことは言うまでもない。教えられたのは専門家の方であった。


2010年2月21日~23日に再度、本プロジェクト中間評価調査団に同行して、トレス・ヘルマナス村を再訪した時にも彼は来ていた。その後、同村で行われた洪水被害軽減堤防試験工事にも率先して協力し、片道2時間を掛けて帰って行った。消えゆく彼の後ろ姿を見て、専門家は再び、心の中で、共に頑張ろうという連帯感を覚えた。


一人の人間の真剣な姿、真摯(しんし)な態度を、専門家として見逃すことなく、人間同士の連帯関係を構築し、全力を挙げて彼らの期待に答えることが、技術協力のポイントであると痛感した。


すなわち「技術協力」とは、技術を媒介とした人間同士の信頼関係構築にほかならない。

【写真】

雨量観測のワークショップ開催のため、トレス・ヘルマナス村のリーダーと事前打ち合わせ(右から3番目が特別に参加したサンタロサ村のリーダー)

【写真】

雨量計の設置指導(左から2人目が特別参加したサンタロサ村のリーダー)

【写真】

雨量観測のワークショップ


【写真】

洪水被害軽減堤防試験工事の準備試験。手前右が、特別参加したサンタロサ村のリーダー

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洪水被害軽減堤防試験工事(ソイルセメントによる基礎工事)

【写真】

洪水被害軽減堤防試験工事(ソイルセメントによる第2層目の工事)

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