ゴールボールの魅力
視覚障害者スポーツという言葉を聞いたことがあるでしょうか?視覚障害者スポーツとは、視覚障害者同士、視覚障害者と健常者が一緒に楽しく行えるように作られたスポーツ競技のことです。私は視覚障害者スポーツの指導、草の根レベルにおいてのスポーツ普及を目的にマレーシアの首都クアラルンプールで活動しています。私の配属先マレーシア盲人協会は視覚障害者に対しマッサージやITなどの職業訓練を行っています。配属先では毎日のように視覚障害者スポーツのゴールボールの練習が行われています。ゴールボールとは1チーム3人編成で試合を行います。選手は全員アイシェード(目隠し)を着け、中に鈴が入ったゴムボール(1.25kg)の音を聞きながら競技します。この競技はパラリンピックの公式種目でもあります。
私はその練習を見るのが毎日の日課になっています。選手はすでに働いている人達で夜はマッサージの仕事、朝はゴールボールの練習といった毎日を送っています。私がまだ配属先に来て間もない頃に施設見学をしている時、男たちの叫び声と鈴の音を聞き、その場所に行ってみたのがきっかけで練習を見るようになりました。そこには成人男性が汗だくになりながら真剣に練習に励んでいる姿をみて私は衝撃を受けました。まるで、見えているかのように重いボールを体全体で受け止め、的確にボールを相手に投げ返します。スピードもとても早く、もし女性の足に当たったら2、3日は痛みが続くくらいのパワーです。しかしレフリー、コーチらしき人は存在せず、選手同士が協力してゲームを運営している状況でした。その時に私は健常者がレフリーをすればもっと効率よく練習が行えると思いました。見ず知らずの私がいきなりレフリーをやらせてほしい、そんな言葉をかける勇気はその時の私にはありませんでした。なんとか私の存在を知ってもらうべく毎日ゴールボールコートに通い選手のみんなとコミュニケーションをはかり、私がここに来た目的などを話すうちに私は自然にレフリーをやっていました。選手たちもレフリーを求めていたのです。みんな名前を覚えてくれ、朝私が行くと「待ってました!!」とばかりに私を迎えてくれます。パワーで攻める選手、守りがうまい選手、様々な選手がいます。毎日の練習で選手の成長を見ることができます。ちょっとした私のアドバイスも素直に受け入れ、繰り返し練習し自分のスタイルを習得します。選手の頑張りに私も勇気や希望をもらっています。
11月下旬、マレーシアでゴールボールのアジア選手権が4日間にわたり開かれました。他国からはイラン、台湾の2チーム、マレーシアからは6チームが参加しました。イランチームが圧倒的に強く、全勝という成績を残しました。イランチームの強さはマレーシアチームに大きな影響を与えたに違いありません。マレーシアチームに足りないもの、それはパワーと戦力です。筋肉トレーニング指導や準備運動の大切さを伝えきれなかった私の力不足でもあります。泣き崩れる選手や満足気な笑みを浮かべる選手、選手にとって捉え方は様々ですが、選手たちにとっていい経験になったと思います。
ゴールボールの知名度はまだまだ低いのが現状です。私は視覚障害者スポーツを世界に広めることも活動の一つだと思っています。彼らにとってスポーツは生きがいとなっています。体を動かす楽しさを彼らは知っています。この中からいつかパラリンピック選手がでることを願って、私の出来ることを残りの任期精一杯頑張ろうと思います。

力強く投球する選手

鈴を聞きながらボールを食い止める選手たち

マレーシアチーム

入場

試合が終わり相手チームと握手を交わす

優勝したイランチームとボランティアの学生