子どもたちの未来を広げる車いす
先日、モンゴルの首都ウランバートルにある第10治療保育幼稚園で終業式が行われました。司会のあいさつに続いて子どもたちの歌や踊りが披露され、集まった教員、保護者は子どもたちの成長を心から喜びました。子どもたちも観衆からの拍手喝采(かっさい)に大きな声であいさつし、もらったプレゼントをしっかりと抱えてうれしそうに帰っていきました。そんな親子を見送りながら、私はここモンゴルでの1年半の活動を振り返っていました。
私が言語聴覚士として活動するこの幼稚園は、モンゴル唯一の障害児対象の公立幼稚園です。1歳から13歳まで約120人の肢体不自由児と知的障害児が幼稚園教育を受けながら、障害に応じて理学療法、作業療法、言語機能および摂食嚥下(えんげ)機能療法の訓練に励んでいます。子どもたちの多くは卒園後、ウランバートル市内の普通学校や特別支援学校、普通幼稚園に入ります。しかし、就学年齢に達しても受け入れ可能な学校がないため、継続して当園に通学している子どももいます。
私が赴任した当時、すでに青年海外協力隊の先輩隊員、多田羅(たたら)千恵さんが養護教員として活動していました。毎日苦労しながらも逃げずに向き合う彼女の責任感とボランティア精神には本当に感心させられました。
「世界の笑顔のために」プロジェクトによる車いすの寄贈を準備したのも多田羅さんでした。半年前の秋、多田羅さんの活動はまさに終盤を迎えていましたが、その忙しい時期に30台以上の車いすが運び込まれました。ひらがなで前の持ち主の名前が書かれた車いす、きっと大切に使われていたのでしょう。どれも中古でありながら手入れされた物ばかりでした。
さっそくクラスの子どもを座らせて、あれがいい、これがいいと真剣な顔で車いすを選ぶ職員。そして正しい姿勢で座ることでしっかりした顔つきに変化する子どもたちを見ながら、日本から寄贈された車いすが、今度はモンゴルの障害児の生活や能力の向上につながることを願いました。
頂いた車いすは毎日の園内活動だけではなく、さまざまな行事で子どもたちの活動の幅を広げてくれました。車いす競争や親子バレーで大人も子どもも関係なく真剣勝負が行われた運動会、きれいに着飾った子どもと職員のベストショットのために、なぜか私が走り回るはめになったクリスマス会、振り付けのわからない子どものために職員が汗をかきかき舞台の袖で踊り歌った特別支援校との共催の音楽祭。小さな車いすに座り、一生懸命活動する子どもたちの姿はどの国でも同じです。
私は子どもたちの活動の場が広がり、さまざまな経験を通して能動的に学習できるよう導くために日々考えて働いてきました。残りの活動期間も言語聴覚士として、また一職員として愛する子どもたちの一日一日を支援していきたいと思っています。
※「世界の笑顔のために」は、開発途上国で必要な教育、福祉、スポーツ、文化などの関連物品を年2回日本国内で募集し、派遣中のJICAボランティアを通じて各国に届けるプログラム(広報室)

いつも元気な子どもたち

震災の被害を受けた日本へ向けての応援メッセージと一緒に

運動会でのチーム対抗ダンス