タイ都市ごみ処分場の状況

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タイに派遣され、1年8ヵ月余り経ちます。配属先は、バンコクから西100キロメートルのタイ中西部ラチャブリ市にある「地方環境事務所8」(Regional Environmental Office 8; REO8)で職員は36名です(写真1)。ラチャブリ県には、水上市場で有名なダムヌンサドワックがあります(写真2)。職種は廃棄物管理支援、活動はREO8管轄5県の自治体などに対する環境管理・測定技術に関する助言、環境モニタリングなどで、都市ごみ処分場に関する事が多いです。


タイの都市ごみは65パーセントが オープンダンプ(写真3、注1)、残り35パーセントが衛生埋立(注2)で処分されています。しかし衛生埋立でもごみの上に土砂で覆う覆土が少なく、ごみの飛散、悪臭の発散、また雨季には浸出水が周辺地域に溢れ出しています。過去の浸出水、観測井戸水の水質データを収集・整理しましたが、体系的、継続的に採取されておらず、調査報告書はほとんどありません。


そこでREO8管轄5県83処分場から4処分場を選定して(下記地図)、乾季、雨季の観測井戸水、浸出水、処理水をサンプリングして、COD(化学的酸素要求量)、重金属などの分析(注3)を計画しましたが、REO8の2009年度(2008年10月~2009年9月)予算がつかず、実施できませんでした。その後数回、職員の月例会で、ダイレクター及びモニタリング・分析課長に必要性を説明して、2010年度予算で乾季、雨季分のサンプリング・分析が認められました。
地図:タイのREO8管轄5県83処分場から4処分場を選定


2010年1月の乾季にフアヒン、チャーム、ポータラーム、パクトーの4処分場の観測井戸、浸出水(写真4)、処理水合計20サンプルを職員4名、研修中の学生と私の6名で採取しました(写真5)。観測井戸を探すのは困難で、土に埋もれて見つからなかったり、見つけても壊れていたり、また前日に井戸水を入れ替えるために水を抜き取ると、井戸が基準通りに造られていないため、地下水につながっておらず、当日は井戸水の水面が低下したままの井戸もありました(写真6)。4月に排水基準の一般11項目(pH、温度、電気伝導度、酸度、アルカリ度、全固形物、浮遊固形物、塩素、BOD〈生物化学的酸素要求量〉、COD、全窒素)及び重金属7項目(カドミニウム、銅、クロム、ニッケル、鉛、マンガン、亜鉛)の分析をREO8分析課で実施して頂き、ヒ素、水銀、セレンの分析は同課での分析経験がないため、JICA現地業務費で民間会社に委託しました。


その結果、処分場が嫌気性埋立(注4)のため、浸出水のCODは、1リットル当たり800~12,000ミリグラムと高く、また浸出水処理機能が不十分なため、処理水のCODは、1リットル当たり300~3,000ミリグラムと高い処分場があり、また観測井戸水のCOD、BOD、ヒ素、マンガン、鉛は、タイの工場排水水質基準を超えている処分場がありました。


今後雨季に周辺への溢れ出し状況及び処理施設運用状況を調査し、引き続きサンプルを採取・分析して、現地調査を続けデータの信頼性を向上していく予定です。


このように、まずは環境対策の第一歩として、家庭ごみ処分に関する水質データの収集、分析技術についての能力向上を支援しています。


(注1)オープンダンプとは、単に地面にごみを積み下ろしして投棄するだけの状態であり、ごみがむき出しになっていて、ごみの飛散、悪臭や害虫の発生がある。
(注2)衛生埋立とは、オープンダンプの問題を解決するために、ごみを覆土し、あるいは底部に水抜きのために集排水管を設けた処分場。
(注3)ごみ処分場の浸出水が土壌に浸み出したり、周囲に溢れ出したりして、地下水や河川を環境汚染する場合がある。そのため、ごみ処分場の浸出水や周囲の地下水に含まれるCODや重金属の濃度を調べ、汚染の度合を測ることを考えている。
(注4)嫌気性埋立とは、オープンダンプ、覆土をしているが水抜きの集排水管がなく、あるいは集排水管があっても埋立地内の空気流通は少なく、都市ごみ中の有機物を嫌気(空気がない)性分解させる処分場。ここでは、上記オープンダンプと衛生埋立の両方を表す。

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写真1:本省次官をREO8に迎えての新分析棟竣工式(筆者夫妻は2列目左端)

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写真2: 川に浮かべたボートで商売をするダムヌンサドワック水上市場

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写真3:ごみの上に土砂で覆う覆土のないオープンダンプで、65パーセントのごみを処分している


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写真4:乾季に、浸出水の集排水管から処分場浸出水をサンプリング

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写真5:サンプリング後、現地木陰での分析用前処理作業。左手前が学生

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写真6:藪をかきわけて進み探し当てた観測井戸。乾季のため水はありませんでした

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