民族の融和をめざして 3

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 「民族の融和をめざして 1・2」(2006年7月6日、7日掲載)で紹介したモスタル高校に、ついに「民族共通・統一ITカリキュラム」が試行的に導入された。これによって、以前は同じ高校内で民族ごとに別々のクラスとカリキュラムで授業が行われていたIT科目が統一され、民族の違う生徒たちが、同じ教室内で授業を受けられることになった。

 モスタル高校のみでのカリキュラム導入ではあるが、実はとても画期的な試みである。なぜなら、
1) 紛争の影響により、民族間の対立が深いこの地域で成功した。
2) 2003年の時点から教育統合が両エンティティ大臣(エンティティ=国家内国家。ボスニアでは、ひとつの国家内に「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」と「スルプスカ共和国」という事実上二つの政府が存在する)で合意されていたものの、民族ごとに独自のカリキュラムに固執し実行に至っていなかったプロジェクトを実現させた。
という経緯があるからである。

 2006年9月からモスタル高校において、この統一カリキュラムでの授業が始まった。しかし、教育は民族のアイデンティティに関わる問題であることから、実施にあたり、民族独自路線を掲げる人々からの政治的プレッシャーを避ける必要があった。そのため、導入前には既存の民族別カリキュラムも残しておき、統一カリキュラムでの受講を希望するかしないかは個人の選択としておいた。
 しかし結果として、すべての学生が統一カリキュラムでの授業を選択してくれることとなった。既存のカリキュラムの内容が圧倒的に古いものであったことや、設備も不十分であったことも一因と考えられるが、一方で、JICAが統一カリキュラム実現を目指して実施してきた課外授業(シリーズ1・2参照)などを通じて、民族の違う生徒たちの間のわだかまりが多少なりとも解消されてきた結果とも言えるだろう。

 今後は、この統一カリキュラムがモスタル高校と同じ県内の高校(ギムナジウム)2校において導入されることが次の目標となる。同時に、エンティティレベル(まずはボスニア・ヘルツェゴビナ連邦)で、統一カリキュラムの承認がなされるべく働きかけている。将来的には、統一カリキュラムの全国への普及、そしてこの事業が民族融和の一助となることを願っている。

 「民族の融和」という側面については、民族のアイデンティティにかかわる問題であるため、その是非についてはさまざまな議論がある。しかし、「人間だから異文化を好きになれないことはある。でも、その存在を理解することはできる」。この事業を通じて、両民族の生徒たちが互いの存在を自然にあるものとして理解できるようになれば、と思う。

【写真】

授業風景

【写真】

統一カリキュラムでの教科書

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