肉塊の芸術品、シュワルマ
名物料理シュワルマについて、佐藤所長のレポート(10月29日付)に続き、その作り方を中心にレポートしたいと思います。
ヨルダンの町にはシュワルマのレストランがいたるところにあり、美味しそうな匂いを放っています。このシュワルマの一番の特徴であり魅力といえば、何といっても芸術的な逆円錐形の肉タワーでしょう。大きいもので70Kgから80kgにもなる肉塊が炎にあぶられ、ぐるぐる回る姿は日本ではおよそ見られない光景で、豪快かつ優雅であり、ヨルダンの人々の肉に対する情熱の象徴であると言えます。
とてもよく目にすることの多いこのシュワルマですが、肉タワーを目にすることはあってもその形成過程を見ることはほとんどありません。私たちが店を訪れれば、いつでもその完成された美しい肉塊は無言で迎えてくれるからです。しかし人間、美しいものの裏側を見てみたいと思うのは生まれ持った性(さが)でしょう。とうとう我慢できずにヨルダンを代表する芸術作品、シュワルマの裏側を取材することにしました。
取材先はJICAヨルダン事務所近くの美味しいと評判のアラブ料理屋。この店の仕込みは大体朝8時半頃から始まります。数あるアラブ料理の中でも店の花形であるシュワルマの仕込みは若き肉塊のアーティスト、シェイフさんの担当です。
肉タワーの作成はシンプルで、漬け込んだ羊肉を垂直に立てた鉄串(太さ1センチ、長さ1メートル程)にどんどん突き刺していくだけです。一見単純で簡単そうですが、下は小さく上に行くにしたがってだんだん肉塊が膨らむようにバランスよく形を整えるのは熟練した職人のみがなせる技です。
また、肉を三段ほど積み上げると、その上に脂肪のスライス(大きさは肉と同じくらい)を一段乗せます。こうすることで、肉に油がしみこみよりジューシーなシュワルマができるわけです。肉3:脂肪1の割合でどんどん突き刺していくと、見る見るうちに肉のタワーは高くなり、10分ほどで五合目まで積み上がりました。しかし、このままの状態では見た目が悪く、美しいという言葉とはかけ離れた、気持ち悪い格好なので刃渡り30cmほどのシュワルマナイフで肉塊の周りを削ります。
するとあっという間に見た目の悪い肉塊が、綺麗な逆円錐形のシュワルマへと姿を変えました!
こうして五合目までの肉タワーの形を整えた後は、また先ほどと同じように肉と脂肪を鉄串に刺していき、その際先ほど削って余った肉も使います。無駄を出さないエコフレンドリーな工夫がなされている訳です。肉のタワーがほぼ完成し、最後に再びシュワルマナイフで形を整えると、肉タワーの天辺にひときわ大きな脂肪のスライスとレモン、トマトを突き刺して美しい芸術品の完成です。
取材を終えて分かったことは、綺麗な逆円錐形の肉塊を作る過程はシンプルで複雑な技術等は用いていないということです。しかし、シンプルであるがゆえに肉塊の形、味、美しさは職人の手にかかっているといえるでしょう。また、逆円錐形の形をしているのは重力によって余分な油が落とされる工夫であり、ぐるぐる炎であぶる方法は効率よく多くの人々に提供できるメリットがあります。シュワルマの美しさはまさに機能美だったのですね。
最後に、日本人は海に囲まれた地形から魚の一番美味しい食べ方として寿司を生み出しました。シュワルマも古代から家畜とともに遊牧生活を送ってきたアラブ人ならではの知恵であると言えます。
そこでJICAは、江戸時代、庶民のファーストフードであった握りずしを芸術の域まで高めた日本人の経験を生かして、まだまだ芸術品としての認知が低いシュワルマの地位向上に資する技術協力を行ってはどうでしょうか。魚の国と肉の国の協力によって、いつの日か「SHUWARMA」が「SUSHI」のように世界共通語として認知される日が来ることを願ってやみません。

秘伝のたれに漬け込んだ肉

肉を金串に突き刺します

肉タワーの形を整えます

シュワルマ完成!!