ヨルダンに住むイラク人避難民の実際(後編)

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(前編からの続き)

 アンマン市内を歩いても、そこにはイラク人避難民の存在は目立たない。注意深く歩き続けることで、ようやく市内のここそこに住むイラク人避難民のコミュニティーを見出すことができる。

 ご馳走することを誇らしげに自慢していたシェフのユーセフは貯金が尽きかけているうちの一人だ。「来年1月にアパートの契約が切れる。続けて契約を更新するだけのお金が手元に残っているか難しい。母親や姉も一緒に暮らしているが、みんな収入はない。もうバグダッドに戻るしかない」。ユーセフが一番心配しているのは、バグダッドに帰ってからの誘拐だ。「ヨルダンから帰ればすぐに近所中に知れ渡る」。帰国組はお金を稼いで戻ってきたとみなされ、身代金誘拐の格好のターゲットだという。

 イラク人避難民に対し、薬と医療の提供を無料で行うヨルダン赤新月社の広報官によれば、ビザ延長ができず、また不法滞在に対する罰金を支払うことができなくなったイラク人がかなりの数存在するようだ。以前は薬を受け取りに来ていた患者が、最近は当局に見つかるのを恐れ、家から一歩も出なくなるのだという。

 貯金が急激になくなっていくことに将来への不安を隠せない者、貯金が底を尽きやむなくイラクへ帰る者、尽きたけど様々な事情で帰ることが出来ずに知人などからの借金を重ね住み続ける者。彼らの表情は一様に悲しげだ。この先どうなるかがまったく見通せない不安とはどんなものなのか。私にはそれが想像の域をはるかに超えた不安だとしか表現し得ない。

 イラク人避難民も私たちのように日々生活の営みを続ける。生活を続ける者は誰もがそうするように貯金を切り崩して生活品を購入する。傍から見ていては避難民だとはわからない。貯金が尽きて帰る者はイラク往きのバスに乗り込むが、バスターミナルには来る者去る者が大勢いて、ありふれた光景にしか映らない。彼らは皆、アンマンの街の風景の中に溶け込んでしまっている。

 想像を絶した不安や状況でも、時間はどんどん過ぎていく。いつ果てるとも知れないイラク紛争の終結とやがて帰還する日を待ち望みつつじっと耐えざるを得ない。これがアンマンのイラク人避難民の実情だ。

【写真】

アンマン市内で見かけるイラクナンバー。写真はバグダッドのもの

【写真】

ダウンタウンで見かける露天売りのイラク人女性。小物を売って生活をつないでいる

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