シリアの踊り子たち
シリアの地中海沿岸にあるタルトゥースという港町で3歳~13歳の子どもに新体操を教えている。ほとんどの人がイスラム教の国だ。シリア人の人柄は大らかで時間もゆっくり流れている。町を歩くと外でお茶を飲みながら話をしている様子があちこちで見かけられる。「こんにちは」とあいさつをするとニコニコして「シリアへようこそ」と言ってくれる。
新体操に通う子どもたちは体を動かすことが大好きな女の子ばかりで、音楽をかけるとすぐに踊り出す。新体操で必要な道具についても国内には販売しておらず、購入が困難である。日本のような練習用レオタードというものは普及しておらず、練習の際にはそれぞれ様々な柄の水着を着用している。イスラム教の世界では女性が肌を見せることはいけないとされているが、その辺は問題なく、夏は水着一枚になって元気いっぱいに活動している。
シリアの新体操のレベルはアラブ圏では高い方である。ナショナルチームにはウクライナから来た専属のコーチも付いている。私はそのチームに対抗できるようなチームを養成するために派遣された。
日本でも指導経験があるが、どこへいっても私自身が子どもたちから学ぶことは多い。シリアの現地語はアラビア語。レッスンも、もちろんアラビア語。伝えたいことが通じない時もしばしばあるが、そんな時は勘のいい少し大きい練習生が「先生はこう言いたいのよ」と通訳してくれる。
新体操というスポーツを通して技術の面の向上だけでなく、ゴミを拾ったり、挨拶をしたり、片付けをしたり、少しの時間だが両親から大切な子どもを預かる分、少しでも大人への階段を上がる手助けができたらなと思う。最近では、私の真似をして自分が脱いだ靴をそろえる子もいる。思い切り褒めたら次の日から毎日そろえるようになった。どこの国でも子どもは大人の背中を見て育つのだと思う。シリアの子どもたちは、私を通して日本という国を見ている。ここまで先輩方が培ってきた「日本」というイメージを今以上に良くしていけるように努めたい。

タルトゥースの街並み

柔軟の指導

練習生たち

リボンの片付け中

踊り子たち

本番